☆ 樋口範子のモノローグ(2020年版) ☆

更新日: 2020年1月1日  
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2020年1月
  

 雪の朝

いつだったか、雪の朝、樹海を歩いていた時

二本の木の根元、その間に

ヒメネズミの足跡があった

よく見ると、足跡は二組あって

どうやら、同じネズミが二本の木の間を往復したようだった

ネズミのしっぽ跡が雪に残るので、進行方向がわかる

方向はわかるが、どちらが往路で、どちらが復路かはわからない

ところが、二組の歩幅には、ちょっとした長短差があった

 もしかして、何かの期待があって、ワクワク飛び跳ねていったら、

 たいした結果もなく、ションボリ帰ってきたのか?

 あるいは、ただの日課で、向かいの木に移動したら、

 思いがけなくハッピーなことがあり、飛び跳ねて帰ってきたのか?

歩幅の長短のそのちがいが微笑ましく、思わず笑ってしまった

 

あれから10数年たった今年の初雪の朝

家の周りに、リスの足跡がいくつもあるのを発見

リスは、ネズミより指の跡がはっきりしているので、進行方向がすぐにわかる

歩幅にも、前足と後ろ足の位置、深さにも差があって、

どういうギャロップだったのか、その高さ、スピードまで想像がつく

 冬眠しないこの子たちは、必死にエサさがして雪の上を走った

 ついこの間埋めたクルミは、どこにある?

 はたして掘り当てたのか?

 10月ころ、この子たちが落ち葉の下に、埋めているのを見ていたわたしは、

その場所に目をやった

が、そこにはまだ、足跡はない

あまりにも現実的な、自分の見方におどろく

つまらない大人になってしまった気もする

周囲の生きものたちは、以前よりずっと自分の近くで生きている

でも、近くなった分、自分の感情からは、はるかに遠くなった

彼らはすぐとなりにいるが、その内面は全くわからない

では、何が近くなったのか? 

それを考えると、雪までもが生きものに思えてくる

 


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