太子館 登山に向けて 失敗に学ぶ成功の秘訣

 

 富士登山を目指す目的は、もちろん夢は御山の頂を極めることですね。

 しかし現実には頂上を目指しながらも、気分が悪くなったり、疲労で体が動かなくなったりと途中であきらめなければならなくなる方も多くいらっします。

 では、富士山で頂上に登れず途中であきらめることが失敗になるのでしょうか?そうではありません、私たち登山ガイドはそれよりももっと悲惨な例をたくさん見ています。例えば、登山中に不注意で怪我をしてしまい、富士山から帰ってきたときには、自宅ではなく病院に入院していたと言うことがあるのです。山道を登るだけだから危ないことは無いとあなどっていると取り返しのつかない大きな怪我を負ってしまうかもしれないのです。ですから、登山成功のために必ず守っていただきたいことがあります。

  • 自分の力を過信しないこと 

  • 途中で断念する勇気を持つこと 

  • 山小屋のスタッフや登山ガイドのアドバイスに耳を傾けること

簡単なことではありますが、上の3つを守っていただくだけでアナタが登山をするときに事故に巻き込まれる可能性は大きく減ることになるのです。


 富士登山は難しいものではありません。かといって不注意や不用意が重なるだけで無事に登山を成功させることが出来なくなってしまうのです。そんなツアー参加者を登山ガイドの私たちから見て、「この人は本当は登れる体力があるのに、もしかしたら登れないかもしれないなぁ・・・」と思ってしまうことがしばしばあります。

 そこで、登山ガイドから見た良くある参加者の皆さんの失敗の例を挙げさせていただきます。登山の時に当てはまらないように注意していただくだけで、もしもの時がなくなりますので是非ご一読をオススメします。

荷物が重い!
  • 自分の荷物に加え、子供の荷物を抱えて、疲れた子供を担ぎ、さらにビデオカメラを回すお父さん。子供がかわいいのはわかりますが、自分がバテてしまっては…  

  • 弁当、おやつ、非常食、ペットボトルを何本も山のように抱えてくるお母さん。そんなにたくさん食べられませんよ。

  • 大宴会をするつもりで一升瓶を何本もかついできた皆さん。飲んだ後の一升瓶を捨てる場所は山にはありません。無駄に荷物を増やすだけになってしまいますから、宴会は山を下りてからされるほうがいいですよ。

 一番多いパターンは、荷物の持ちすぎです。たかが1、2kgでも8時間も持ち続ければ自慢の体力をじわじわと消耗させてしまいます。
 では、どんな対策を取るのが一番良いでしょうか?手っ取り早く「飲食物」を軽くすることがポイントです。
 まずは飲み物。晴れて暑い日でも、飲む水の量は下山までに1リットル程度です(個人差はありますが)。食べ物については、軽くてエネルギーになるもの(菓子パン、チョコなど)を中心にするといいでしょう。水気の多いものは重くなります。
 万が一、足りなくなったらどうするの?とご心配でしょうが、そのときは山小屋で売っているものを活用するとよいでしょう。下界のスーパーやコンビニに比べると確かに値段は張りますが、安全に登山をするのならなるべく荷物を軽くすることが一番です。必要なときに必要な分だけ補充できる山小屋の活用は、支払う対価に見合う価値は十分にあるのです。


雨具や防寒具が足りない!
  • 山頂目指して夜間登山中、汗が冷えて寒い思いをしている人 

  • 雨が降っても持っているのはポンチョだけ、脚から濡れて酷い目にあう人

  • 雨が降ったら傘をさせばいいと思っている人

 富士に登る覚悟がある以上、ほとんどの人は「朝の山頂は寒い」「雨が降ることがある」といったことはご存知だと思います。しかし、標高3700m級の富士における寒さは下界のそれとは全く違ったものなのです。

 一番気をつけなければいけないのは雨具。雨にさらされると、体が冷えて動けなくなってしまいます。防水のしっかり利いた、セパレート(上下が別になっているもの)の雨具を選びましょう。山の雨は風のせいで横から吹き付けますから、脚が完全に覆えないポンチョ(上から羽織るもの)は避けることをオススメします。

 意外と見落としがちなのが下着です。
 綿のような汗を吸う素材のものだと、昼間の汗を含んだまま発散しない為、夜や急に天候が悪化したときに水分を含んだ下着が体温を奪ってしまうということがあるのです。
 ですから、下着はなるべくなら化学繊維のものを使われることをオススメします。あとは汗をかきすぎないようタオルで拭ったり、体調に合わせてこまめに服を着替えて蒸れないようにすることでしょう。
 朝の山頂は摂氏0度くらいまで下がるのが普通だと考えてください。さらに風雨が加わるだけでものすごく寒くなることを覚悟してください。


歩きのペースがめちゃくちゃ!
  • 最初からはしゃいで先頭を走り回るも、すぐにスタミナ切れで途中からピタリと動かなくなるお子さん

  • 若さにまかせて最初からハイペースで、途中から高山病で苦しむお兄さん、お姉さん

  • 疲れたからと、少し歩く度に数分休んでまた数歩と繰り返してしまうおじいさん、おばあさん

 登山中に良く見かけるのが、ゆっくり歩いていく私たちツアーを颯爽と抜いていく人達です。富士では本当にたくさんいらっしゃいます。亀を追い越すウサギのような素早さです。
でも、その人たちにずっと上で再会することも多いんですね。ハイペースで登りつづけた結果として山小屋までたどり着かずにバテたり、高山病で苦しんだ姿でです。

 登山ガイドが皆さんにローペースでゆっくりと歩いていただくのは理由があるのです。その理由は正しいペースを維持することで、無駄に体力を消費せず山頂に楽に着くことができる上、高山病を防ぐことができるからです。>>「高山病とは」

 実は、皆さんは低地から5合目(標高2300m)までを、バスに乗ってたった1時間で来ているのです。
  この間、気圧は2割近く下がっています。それでは気圧に体が順応できないのも当然です。その上、ハイペースで登ればどんどん気圧が下がっていきますから余計に高山病になり易くなってしまうのです。だからこそ、最初は時間をかけてゆっくり歩くのが肝心です。

 もうひとつの歩き方のポイントは、「一定のペースで、休みすぎない」ことです。バテてくると、どうしても休みたくなり、数歩進んでは休む。そして、気合を入れてまた数歩、力尽きてまた休む。
 しかし、進んでは止まる歩き方は決してよくありません。歩き出すときに勢いをつけて進むだけに体力が余分に要りますし、夜なら休憩中に寒くて体が冷えてします。多少はゆっくりでもいいですから、なるべくツアーの列に付いて励まし合いながら歩くといいですよ。


山小屋ではよく休もう!
  • 「眠れないから」と夜山小屋でいつまでも起きている人

 シーズン中の山小屋は宿泊客が多い上に騒々しいです。 「だから、眠れない」それはわかります。でも、8合目まで4時間の山道。疲れていないはずはありませんよね。朝は0時〜1時出発と、早いのですから、少しでも体力の回復に努めたほうがいいですよ。
 たとえ眠れなくて、横になって目をつぶっているだけでも体を起こしているのよりも疲れが取れますから…。


どうしてお酒をたくさん飲むの?
  • たどり着いた山小屋でなみなみとした杯を乾している方々を見受けられます。確かに、おいしそうですが…

 みなさんに知っておいていただきたいのが、「山では低地よりもずっと酔い易い」ということです。これは気圧が低いことと登山で体力が消耗しているからです。翌朝歩きはじめるのも早いですし、酔いが抜けないときっと後悔しますよ。お酒は登頂を果たして下山した温泉で汗を流した後のほうがよいのではないでしょうか?

 ちなみに太子舘では「館内禁酒」となっています。ご注意ください。

 以上、私たち登山ガイドがよく見る失敗を挙げてみました。これを参考にして、ぜひツアーに参加している皆さんで一緒に登頂を果たしましょう。富士山でお待ちしております。

 


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