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毎週土曜日、山梨県の東南部(郡内と呼ばれる地域)に、6万部配布しているタウン誌「フジマリモ」紙上で「山麓探偵団日誌」として掲載(毎月一回)されたものを、ここで転載してご紹介します。(ロゴ=フジマリモ紙提供) |
G | 平成12年12月16日号掲載 | 紅葉の樹海に安らぎ |
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立派な『板根』を持ったミズナラの大樹。腰を下ろしたらスッポリ隠れてしまうほどだ。一体どれくらいの年月を経て造りあげたのだろう。団長の勧めでその側に仰向けになってみる。風に揺れる緑や赤の葉と、その合間から見る美しい光景が広がっていた。 どこからともなく漂う甘き香ばしい香り。思わず甘栗やさんを捜してしまうほどだ。それは桂の木の葉と判明。いつしか一枚として同じモノがないことに気付く。一人ひとりの顔や性格が同じではないように一樹一葉同じではない。だからこそ集まるとうまくバランスがとれるのかしら・・・。 |
F | 平成12年11月18日号掲載 | 自然観察と細密画 |
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そんな枯野の中で見つけたバライチゴの赤い実、リンドウ、フジアザミ、キノコ等。小さな秋を各自思い思いに写生を始めました。地べたに寝そべって目線を下げ、対象をじっくり見つめていると、知らず知らずのうちに身体が花に近づいているのでした。 団長から「花弁をうろついているテントウムシやミツバチも一緒に書き留めたら」とのアドバイスがあったのですが、虫たちの形態がはっきり解らず、描く事が出来ませんでした。写真は夕日を受けて頑張って描いている樋口世話人と仲間たちです。 |
![]() パノラマ台へ向かう前に『植物の越冬戦略』と題したミニレクチャーが開かれました。常緑樹と落葉樹、広葉樹と針葉樹、一年草と多年草などの冬越しの方法について団長から話しを伺いました。 |
![]() 一部を紹介すると、冬芽の準備は花が終ってすぐに始まるとか、氷点下何十度もの寒さに耐えている樹がたくさんあるとか。自然界の営みのすごさに感嘆し、圧倒されました。 |
E | 平成12年10月21日号掲載 | ブナの悲鳴が聞こえる遊園地も山を荒らす |
![]() 「 この森に未来はあるか 」 |
団員12名が案内されたところは、富士山南麓西臼塚。その入り口で奇妙なものを見た。大岩をびっしり並べ、丸太の棚をしつこく築いてある。無法なバイクやオフロード車の進入を防ぐナリケードだそうだ。山の中を走りたい気持ちは分からないでもないが、それが如何に山を傷つけるか考えないのだろうか。 山道をゆっくり登っていくと、いろいろな人工物が出てきた。オリエンテーリングの看板やベンチ、果てはアスレチックまで。そこは整備された遊園地だった。こんなものはいらない。これこそ明らかに富士山を荒らしている。 気を取り直してよく見ると、さすが南麓の自然は樹種が豊かだ。サンショウバラ、イタヤカエデ、ウラジロモミジ、ブナ、ミズナラ、ヒメシャラ、サワグルミ、ホオ、マユミ等々。白鳥さんの説明で多くの発見があった。 |
D | 平成12年9月16日号掲載 | 巨石は何を語るか?石割神社 |
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「これかぁ」。デーンと構える巨石を目の前に、ため息混じりの第一声である。近づいて観察開始。例の岩の隙間にも恐る恐る足を踏み入れた。通り抜けられそうでホッとしているところに「この造りどうなっていると思う?」と団長。名探偵よろしく、五感をフル稼動させ調査した。 その結果、「もともと一つの大きな岩が何らかの衝撃を受け、ここで割れてそれがドンっと下にずれ落ちてこうなって・・・」「でも下には別の岩があるからずれ落ちるって事はないよ」「・・・」無駄な推理は終わりにし、古の人々が ” 神 ” とあがめたこの巨石を目の前に、ちょっとした時間旅行を楽しむことにした。 それにしても、見れば見るほど謎は深まる。きっと正式な調査を行えば謎は解けるであろう。でも、知りたくないような気もする。全てを知ることより、知らないでいる方が幸せで楽しいこともあると思うから。 |
C | 平成12年 7月17日 掲載 | 富士山に現れる幻の滝 |
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霧に中、山頂方面から水の流れるような音らしきものが聞こえだしたのは、弁当を食べ終えたころ。 八合目付近は陽が射していたらしく、しばらくすると細い筋となって水が流れ落ちてくるのが確認できたのです。流れ始めに遭遇し、しかも一段一段下り、滝になっていく様子をつぶさに観察できたことは、単なる滝を見るよりも感動的でした。 これは偶然の出合いです。自然の中には、そこに人がいるいないに関らず、さまざまな事が起きている。この事を改めて感じる出来事であったし、そこに居合わせることができたことで身近な自然の再発見の面白さ、奥深さの一つを体験できたのではないかと思います。 また、自然のそんな一瞬の表情を見て参加者は驚き、何かを感じ取ったようでした。 その感動が自然に対する畏敬の念となって心に残り、自然とのつきあいを考えるときの一助となればと願っています。 ( 山麓探偵団6月担当団長 伊藤 浩美 ・ 山中湖村在住 ) |
B | 平成12年6月17日 掲載 | 虫の目になって観察 |
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長く根雪に閉ざされた白銀の世界が終るのを待ちかねたように、いっせいに芽吹き始めた緑や咲き競う色とりどりの花たち。それをあえて観察し、描写するというテーマに誘われて森の喫茶室あみんに到着。 この日の団長である木村修氏が紹介され、静かに、そして熱のこもった講義が始まりまして。一時間半ほどの講義の後、団長のアトリエ兼ギャラリー「ガラリエ・オム」の周辺からパノラマ台へ通じる山道などを歩きながら、野に咲く花々の説明を受け、午後はそれらの花をもう一度よく観察しながら、初めての「細密画」に挑戦。細密画とは単なる写生と違い、花びらの中にある細かい筋に至るまでを拡大ルーペを近づけて、まるで自分が虫になって花の中に入り込んだかのように観察して正確に描くものだと知りました。 |
このとき始めて朝の講義がなぜ植物の観察方法にとどまらず、その系統や歴史にまで及んだのかを納得したのです。植物を生物学的に理解し、自然に対する確固たる認識を持って初めて細密画というものが描けるのだと教えられました。 この日の講義と観察を通じて「自然環境を守る」「自然を大切にする」という発想は、人間が他の生物を守ってやるという上段に立った思想に転じる恐れがあり、本来は人間も自然の一部であり、自然と共にしか生きられない存在であるという謙虚な気持ちにならなくてはいけないこと、さらには。団長曰く、「自分が人間であることを忘れて自然の中に溶け込む」ことの大切さを身をもって感じました。 最後に木村団長の忘れがたい言葉―「このまま自然破壊が進めば人類はほろんでしまうが、みんながほんの少しずつ自然に対する観察と理解を深めていけば、まだ存在できる可能性はある。」 この日が結婚記念日だった私たちとって、この言葉は最高のプレゼントでした。 (山麓探偵団員 山中湖村在住 文=西山 寛 ・イラスト=西山 真知子) |
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A | 平成12年5月20日 掲載 |
富士山の裾野に広がる偉大なる自然や文化を、文字通り探索し、体験し、そこから何かを学んでいこうではないかと結成された『山麓探偵団』。第一回目の「樹海探査」に続き、第二回目となる「富士のグランドキャニオン眺望」が4月8日。決行された。
ハイキング気分(!?)で現れた団員たちを、今回待ち受けているモノとは・・・。
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山麓探偵団第二回目の実地踏査は、皆の期待と楽しみを集めて出発しました。 が、スコリア(火山礫)の道は険しくまた遠く、残雪で滑ったり転んだり。それでも皆「グランドキャニオン、グランドキャニオン」を合い言葉に頑張りました。 そして遂に、富士山の中にこんな風景が隠されていたのか、と、その大きく迫り来る断崖を目にしたときは、「このすばらしい自然の造形物をいつまでも守っていけたらいいね」と、皆心に誓いました。 (山麓探偵団員・飛鳥井 恵 ・・・山中湖村在住) |
@ | 平成12年4月15日 掲載 | 自然と歴史の人材再発見 |
「昔はあのフジヤマの上半分を切って駿河湾に転がしたかった。今じゃ富士山のおかげで外車に乗ったりゴルフたたきができる時代になった」
24年前の初冬家族共々東京から山中湖畔に引っ越してきた時にきいた、今はなき古老の話である。
昭和の30年代まで米が作れなかったこの地区の「富士山颪」への恨みでもあり、その苦労の歴史を忘れてしまったように観光業に夢中の次世代への苦言でもあった。
そのような賑わいだ時代も過ぎ、その時の古老の憂いが現実のものとして、新しい観光のあり方や、生き方が問われる時代となった。開発の爪痕はいたるところに残り、観光客誘致の施設は財政赤字として住民に重く圧しかかっている。
考えてみると山麓の大きな財産は、富士山であり、澄める湖であり、緑豊かな自然環境であることはいうまでもない。
この富士山麓の自然と歴史と人材の再発見、再発掘をしようと「山麓探偵団」を昨年の暮結成した。友人のペンションのオーナー達にも声をかけ、「まずそれぞれが楽しもう!発見しよう!それをお客様に発信していこう!」を合い言葉に、新しい山麓観光のあり方を模索することにした。
3月11日(土)
の第一回実地踏査は「未知なる樹海を探索しよう」をテーマに19名の参加者を得た(登録団員は現在25名)。
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毎回担当団長を個別に予定しており、今回は6年前より山中湖村に移り住んでいる、ネイチャーフォトグラファーの伊藤浩美氏(団員)にお願いした。 伊藤さんは、「生きもの地球紀行」、「動物わくわくランド」などの撮影や、自然をテーマとした教育フィルムを数多く撮影担当された経歴があり、動植物の生態に関しても研究者が一目おくほどの博学博識の持ち主である。富士山周辺の動植物のフィルムも多く、特に樹海の植物空間を一年間通してまとめたビデオフィルムは、最も貴重な記録である。(探偵団収蔵) |
毎回担当団長を個別に予定しており、今回は6年前より山中湖村に移り住んでいる、ネイチャーフォトグラファーの伊藤浩美氏(団員)にお願いした。
伊藤さんは、「生きもの地球紀行」、「動物わくわくランド」などの撮影や、自然をテーマとした教育フィルムを数多く撮影担当された経歴があり、動植物の生態に関しても研究者が一目おくほどの博学博識の持ち主である。富士山周辺の動植物のフィルムも多く、特に樹海の植物空間を一年間通してまとめたビデオフィルムは、最も貴重な記録である。(探偵団収蔵)
「富士山は想像以上に環境破壊されています。乱開発やゴミ問題で世界遺産に登録できなかった。せめて樹海だけでも真剣に守っていきたい」との伊藤さんの気持ちは、従来の樹海認識を一変させられた参加者にも十分に理解できたものと思う。エコツアーと称した観光化が危惧される樹海の今後に対し、伊藤さんのような地道な活動は、まさになくてはなならい"山麓の人財"である。
樋口
裕峯(山中湖、森の喫茶室あみんオーナー・山麓探偵団お世話役)
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