山麓探偵団通信 

編集・発行 = 「山麓探偵団」事務局 樋口 裕峯

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自然細密画

「秋の色づきを描く」

十一月八日(木)・十日(土)は、昨年に引き続き、山麓の動植物を自然細密画の技法を学びながら描いてみようという企画でした。両日とも雨模様でしたが、「あみん」周辺の林の中で木の実や紅葉を観察し、それぞれが描きたい素材を集め描き始めます。

細密画は、その名前からして緻密な作業のように思いますが、ワイルドライフアーティスト(自然細密画家)の木村修さんに指導していただき、形のとり方、色の作り方、色の重ね方などを手ほどきしていただくと、不思議なくらい山麓の秋の色づきがそのままスケッチブックに写し取られていきます。

「葉は、その成長の順番通りに描いてください」という木村さん。その言葉に従い、春からの成長過程を想像していく

と自ずから形が決まります。そういえばミニレクチャーの時、動物はその骨格(背骨や骨組など)をきちっと捉えて描くよういわれた事を思い出しました。

十分観察し、その造りを理解していくと描くことの面白さが倍加してきます。

しかし、色の作り方には苦労しました。最初は薄い色から描き、光の当たり方、影の具合など調整していきます。

参加団員の作品を見ると、まるでカラーコピーしたような作品が出来上がっていました。満足の一日でした。   (世話人)


特 集

探偵団」運営スタッフの感想

 今回は、二年間の活動を通し、「担当団長」をしていただいたり、事務局や参加者の方々へのもてなしなど、普段は裏方の運営スタッフの感想を「特集」として掲載します。

◇ 木村 修 (ワイルドライフアーティスト)

昨年の春、「あみん」の樋口氏より「山麓探偵団」で、「春の植物を描く」ということで団長をお願いできないかとの依頼があり、細密画を描く上での視点およびハウツーテクニック等をお話して頂きたいとの事。
 一瞬考える。それは何故か?
 私が今まで指導してきたのは二十歳前後の若い学生達ばかり。一般の人、人生の先輩も多いはず。さてどうするか?
 しかし、何か絵の好きな人達が集まれば、それはまた雰囲気が違って楽しくできそうだな。よしやろうと快諾した。
 さて当日は、生憎雨! とにかくしとしと皐月雨の「あみん」へ、・・。
 「皆さんおはようございます。本日は一日宜しくお願いいたします。」と挨拶の後メンバーを見渡す。
 様々な視線をバシバシと観じ、皆期待の表情である。
 女子学生のラブラブ光線を放つトロンとした目とはえらい違いである。
 初回でもあり、さあ気を引き締めて話に入ろう・・・。
 レクチャーの時間もアッという間に過ぎ、現地へと繰り出す。
 草花も晴天時の表情とは一味違う。蜜を流されぬよう皆ひと工夫して雨をしのいでいる姿も可憐である。
 まだまだ知らない事ばかりの植物の世界だが、描く事、見た事で多少知り得た範囲のことで話をしてきた。皆生命の営みの素晴らしさを感じてくれているだろうか?散策活動しながら楽しんでいるだろうか?・・少し気になる。
 毎回動植物の解説の折に思うことなのだが、いつも不安になる。
 絵を描く事については少しは知っているのだが、それ以外は余り良く知らない。学者でもなければ、大学の先生でもない。もっともっと学ばなければと思う。
 午後は場所を変えてスケッチから着色へ、細密画の世界へと皆で突入。皆の顔が真剣である。
 ルーペ片手にミクロの世界を覗き見る。今まで見た事もない神秘の世界を垣間見る。
 どこかで「あっ、虫になったみたい!」と声が・・・。
 そうそうその調子。その虫の気持ちで描いてくださいと心の中でエールを送る。光の描き方、視点のポイント等話ながらも二〜三時間があっという間に過ぎた。
 皆普段使わない神経と筋肉を使ったせいか少し疲れ気味。しかし全員心地よい疲れのようで満足な表情に少し安心。無事一回目を終える。
 第二回目は秋の野草である。この日は念願叶い晴天に恵まれた。ススキの裏山で昼食をとる。目の前には富士山、下には湖とロケーションは抜群である。午後はフジアザミを描く。それぞれ大地に座し又這いつくばりの思い思いの格好で描く。
 そう、大地の温もりを感じ、同じ場の空気感を描く。頭脳や理屈で描くのでは無い。五感で描いてこそ自然の絵である。その気分にどっぷりと漬かり、描くモチーフと同等になって下さい。
 人間である事を一瞬でもいいから忘れて同化して下さい。と願うのです。
  そうすると今まで見えなかった何かが見えてくると思います。その何かは、
 各個人で違うものであっても共通点はあると思います。
 それが見えてくると自然の営みが何と素晴らしく、感動感激に満ちた世界だったのだろうと思えます。そして、同じこの時この場この空間を共に生きる喜びと感謝の念で描く度に一杯になるのです。
 第三回目は、紅葉と木の実の「秋の色づきを描く」を行った。参加された方々、そして、一回、二回と出席していただいた団員の皆様方、そしてスタッフの皆様に感謝しお礼申し上げます。つたない話と指導ではありましたが。お付き合い頂きありがとうございました。

 伊藤浩美 (ネイチャーフォトグラファー)

二〇〇一年の山麓探偵団活動(散歩会)も、あと一回を残すところとなりました。改めてこの一年を振り返って見ますと、まあ、良くも続いたものだと(伊藤団長の散歩会が)、そして参加者の皆さんは本当に満足しているのでしょうか?と、不安になってしまい来年は団長を辞退、いや、お声が掛からないのではないかと、今年の活動を振り返ってみると思ってしまいます。
 探偵団活動も、富士山の知られざる場所や姿、或は、自然等を紹介するだけに留まり、その本来の自然のあり方や営み等を伝えたいと言う私個人の思いは、自分自身の力不足もありとても参加者に伝えることが出来ていないのではないかと、思っています。
 勿論、私にそんなことを教えられるような知識や教養は持ち合わせてはいませんが、富士山の事を知りたい、自然のことが知りたいと言う参加者の方々に、富士山の自然ではなく、私達を取り囲む自然界、環境を少しでも理解して頂けるような活動を、来年度以降のプログラムで考えていきたいと個人的には思っています。多くの方々に参加して頂き感謝しています。また、来年は、もう少し専門的な分野を紹介して行きたいと、個人的には考えています。去年、今年は初級編、来年は中級編と位置付け、自然の面白さを紹介して行きたいと思います。  今年、参加してくださった皆さんには本当に感謝しています。有難うございました。
  そして、来年も楽しみましょう。

◇ 三好幸一(ペンションまりも・オーナー)

探偵団も二年目をさしたるアクシデントも無く、終えることができそうです。
 初めから細かい決め事も無く、和やかなムードの中でやって参りました。
 これも偏に団員の方々のお人柄によるものでしょう。
 それぞれの参加者が、いつの間にか特性を発揮して活動を盛り上げて下さいました。
  植物博士、健康博士、食物博士、ムードメーカーと多才な方がいらっしゃり収穫もいっぱい!
  新しい方がいつ参加されても楽しく過ごされるよう心掛けているつもりです。
 サークルでもなく、山岳会でもなく、一人一人がそれぞれの楽しみ方を発見できる活動でありたいと、思っております。
 毎月「通信」の宛名書きをしていますと、皆様のお顔が浮かんできます。次回も参加されるといいなーと思っております。
 来年も楽しく元気にしましよう。

◇ 鈴木千春(ペンション モンテラック・オーナー)

早いもので今年もあとわずかになりました。
 山麓探偵団も早いもので、二年目も終わろうとしています。一昨年(一九九九年)の暮れに、樋口さんが「こういう話(山麓探偵団)があるがどうだ?」ということが発端でした。
 当初はただ「面白そう」というのが参加の動機です。
 記念すべき山麓探偵団第一回は大雪のあとの「神座風穴」だった。ここのアプローチはちょっと長め、風穴に入ってからも地底二〇〇数十メートルまで下降。普段の運動不足がたたりしんどかったはずだったが、それよりも樹海のすばらしさに驚き、また、雪の中を歩くことの楽しさに気づいた。
 そして、そのときの「新鮮な喜びと感動」が今でも鮮明に脳裏に浮かんできます。
 山麓探偵団も来年は三年目を迎えますが、このときの「新鮮な喜びと感動」をまた期待したいと思う。