<その2>


<活動記録>つづき


引き返そうと言おうとしたが、食事をして待ちましょうという団員の熱意に霧の中の岩場で昼食。
その間、伊藤団長は上の方に点検に行ったが肩を落として降りてくる。
冗談を言いながらの和やかな中に、霧の天空に薄日が滲んできた。
団長は立ち上がり、再度上方に行ったかと思うと踊るようにして岩場を駆け下りてくる。
「今元栓を開けましたから!」とのユーモアの声に、急いで荷物をまとめ岩の沢づたいに上へ向かう。
ここは霧の中だがおそらく8、9合目から上は晴れているに違いない。そして雪渓が溶け出した。
確かに音だけが聞こえてくる。
それが今、目の前に一筋の糸となって流れて来る。
一昨日見た滝のその生まれたてに遭遇したのだ!
なんと幸運なことか!!
季節限定。しかも条件が揃わなければ見ることのできない”まぼろしの滝”の瞬間に立ち会っているのだ。
一筋の糸は徐々に太さを増し、下の滝壷に溜まっていく。しばらくしてそれが一杯になるとまた一筋の糸がそこから零れ落ちる。
音にひかれて上へ上へと登っていく。
雪渓の下をくぐり、岩の淵をまわって流れ落ちる光景をしばし楽しむ。
と、その時、一瞬にしてあたり一面の霧が晴れ、富士山の頂上までがハッキリと姿を現わした。

しばし見とれたり、写真を撮ったりと約10足らずのうちに再び霧に中に山頂は消えていった。そしてあたり一面もまた霧の中となった。
ドラマチックな出来事の連続に満足し下山。
途中の平坦部でフォローレクチャー兼自己紹介。
どんな時もユーモアの尽きない良き仲間たち。
”まぼろし” が ”まぼろし” に終りかけた今回の活動は何と恵まれていたことか。
一昨日の滝がそのままだったら、いつもそこにある普通の川や滝に思った方もあるだろう。
しかし、今回は規模は小さくとも ”瞬間の妙味” と ”神秘的な時間と空間” を十分に味わうことができた。
今日一日がまさに ”まぼろしの一日” だったように思える。
霧の中の駐車場で解散の挨拶。
車に乗ろうとした瞬間、再び霧が晴れ富士山頂が姿を現わす。

慌てて記念撮影。この次のシャッター時には山頂の姿は写っていなかった。
報告書作成=
山麓探偵団事務局
(世話人 樋口裕峯)



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